ガラが悪いと思いきゃ

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トップバッターにもかかわらずシクヤンはリハーサルにも姿を現し、披露された多少の演奏のサービスを堪能した。 そしていよいよ本番が開始される手筈が整い、YOHさんと並んでそのステージへと目を凝らす。 夏らしい青空の下、シクヤンの立つ舞台、唄う姿は余りにも眩しく、煌めいて見えた。 駆け抜ける海風が曲の持つ色に相まって、爽快感に心臓が高ぶる。 皆が手を上げるノリの良い曲のさなか、ふと見遣った右隣の人も、上方へ手を振り上げている。 この指先から熱が、ステージ上の彼らへ飛んで届くのだろうか、などと過ぎった瞬間、見つめ過ぎたのかYOHさんと視線がかち合う。 その目が穏やかに細められ、わたしは照れくささから唇を噤んでしまった。
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