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「あっいたいた!」
ぼんやりとゲートまで出迎えに向かっていると、耳慣れた声が前方から届き、我に返った。
「ほんまごめーん! なんかおごる! ……どしたん? 放心してますけど」
背の高い絢がわたしの顔を覗き込み、掌を振っている。
彼女の右耳の下でひとつに束ねられたウェーブヘアが顔の前でふわりと揺れ、目を瞬いた。
「あっ、なんもない」
「なーにー? 念願の野外でシクヤンがそない良かったんかぁ~?」
「そうそう。もーめっちゃ最高過ぎて言葉にならん感じ」
発した感想は事実ではあったが、余りにも呆気ない彼との幕切れに暫しうわの空で会話に応じていた。
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