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“電車は一層増した闇の中を 深く潜る
行く人 来る人の想いを運び 交錯する
明日も 来月も 来年も ずっと胸に響く音が揺れ続ける
ガタンゴトン ガタンゴトン”
夢とうつつが入り交じるような気配を覚えると、強烈な睡魔にいざなわれ、頭の奥がふらふらと揺れ始める。
窓の向こうの景色を映していた瞳は、心地好い疲労感と共に、次第に重い瞼の内側へ閉ざされた。
買い手が受取連絡を行うと、取引はおしまいだ。
取引完了後のメッセージのやり取りはあまり推奨されておらず、何よりどう思われるのか不安で、当たり障りのない内容しか書けなかった。
「……もう会うこともない人だ」
思い掛けず声に出して呟いている自分を感付くが、深く考えないよう努めた。
程なく通信可能期間である1週間が過ぎ、連絡手段は絶たれた。
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