海風の中、突き抜ける音と空

ガラが悪いと思いきゃ

「今度のミニアルバムばり良くないすか。何て言うんかな……郷愁っていうの？ 雰囲気あって」
「そうですよねっ！ あのリード曲やりそうですよね！ 野外で聴いたら絶対爽やか！」

見てくれや放たれるオーラから察するに、もっと恐いバンドを聴いている人かと思えば、案外繊細なトーンの音楽が好きなんだな。
不躾な物言いも普段のように不信感へは繋がらずに、立ち所に恐怖心は親近感へと変化の兆しを見せた。

途端に目を輝かせ興奮してしまった現金なわたしに、心なしか彼も薄く微笑んだかのように見え、睫毛を瞬く。

あ、笑うと……怖い感じは受けない。

心を過ぎるもすぐさま無愛想な目付きに戻ってしまったが、悪い第一印象は少なからず払拭されたように感じた。