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第8章
争いは避ける方が賢明だと踏んだのか。
「これには訳が――」
気だるげに身を起こすと
穏やかに微笑み由莉は両手を広げた。
「訳だと?おいっ……!その傷は何だ?」
薄暗い部屋の中。
それでも目敏く僕のひっかき傷を見つけた冬馬は
「おまえがやったのか?」
慌てて身体を隠そうとする僕に駆けより
シャツを捲って声を荒げた。
「まさか!俺の手は鉤爪か?」
「それじゃ――」
冬馬はそれ以上由莉を責めなかった。
背中の傷口を見れば
人間の爪痕でないのは一目瞭然だからだ――。
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