第五章 心の行き着く先(1)

11/11
前へ
/213ページ
次へ
「尋! 尋! 聞こえるか、大丈夫かっ!?」  白銀にも見える体毛と鮮血が斑(まだら)になっている身体をさすりながら懸命に声をかける。 「尋、頼む、頼むよ。死ぬな、死なないでくれよっ!」  和兎は気付けば涙声で叫んでいた。  やがてぴくっと尋の大きな図体が動き、 「……和兎」  毛皮に顔を埋めていると、そんな声が聞こえ、和兎は顔を上げる。 「尋!」  優しい光をたたえる青灰色の双眸が和兎を捉えた。 「……泣かないで」  頬をぺろっと舐められる。 「えへへ、和兎の涙、あったかいね」 「……大丈夫、なのか」 「うん。和兎が来てくれたから大丈夫だよ」  と、尋の身体は獣人から人間の姿に戻る。  和兎は尋の肩を支えて立ち上がった。 「和兎は大丈夫なの。すっごく殴られたり蹴られたりしたのに……」  自分の方がずっと辛そうなのに心配する尋に、和兎は笑いかけ、前髪を持ち上げ、あてていたガーゼを外す。  刻印が鮮やかに浮かび上がっていることだろう。 「お前のお陰で大した怪我じゃねえよ」 「――良かったぁ……」  尋が目だけで笑った
/213ページ

最初のコメントを投稿しよう!

216人が本棚に入れています
本棚に追加