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「尋! 尋! 聞こえるか、大丈夫かっ!?」
白銀にも見える体毛と鮮血が斑(まだら)になっている身体をさすりながら懸命に声をかける。
「尋、頼む、頼むよ。死ぬな、死なないでくれよっ!」
和兎は気付けば涙声で叫んでいた。
やがてぴくっと尋の大きな図体が動き、
「……和兎」
毛皮に顔を埋めていると、そんな声が聞こえ、和兎は顔を上げる。
「尋!」
優しい光をたたえる青灰色の双眸が和兎を捉えた。
「……泣かないで」
頬をぺろっと舐められる。
「えへへ、和兎の涙、あったかいね」
「……大丈夫、なのか」
「うん。和兎が来てくれたから大丈夫だよ」
と、尋の身体は獣人から人間の姿に戻る。
和兎は尋の肩を支えて立ち上がった。
「和兎は大丈夫なの。すっごく殴られたり蹴られたりしたのに……」
自分の方がずっと辛そうなのに心配する尋に、和兎は笑いかけ、前髪を持ち上げ、あてていたガーゼを外す。
刻印が鮮やかに浮かび上がっていることだろう。
「お前のお陰で大した怪我じゃねえよ」
「――良かったぁ……」
尋が目だけで笑った
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