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和兎と尋は一度薬局に寄ってから自宅へ戻る。
「――尋。足下、気をつけろ」
「うん……っ」
とりあえずリビングのソファーに座らせる。
「待ってろ」
袋から取り出したのは消毒液やら包帯、絆創膏……傷に効きそうなものを片っ端から買ったのだ。
「服、脱げるか?」
「やっぱり和兎は優しい」
「……黙ってろ」
和兎は恥ずかしくてついぶっきらぼうに言う。
「はあい」
そんなことは分かっていると言いたげに、尋は弾んだ声で返事をした。
和兎は背中や腕を触診すると、くすぐったそうに尋は身をよじる。
「あれ?」
間の抜けた声が出てしまう。
「どうしたの」
「……傷がない」
獣人だった尋の身体には所々血が滲んでいたから出血していたことは間違いない。
にもかかわらず、今の尋の身体にはどこにも傷跡がなかった。
「んー。治ったのかな」
「治ったって、あんだけ血が出てたのに」
「僕は神様だし」
「……ご都合主義すぎるだろ」
安心したが、釈然としない気持ちは一応ある。
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