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「じゃあ次は和兎の番だねっ」
「俺は大丈夫だって言っただろう」
「よくないよ。和兎は人間なんだから。傷だって勝手には治らないでしょう。その刻印のお陰でも怪我はするでしょう」
「……まあ」
「じゃあ僕が診(み)るからね」
「何で楽しそうなんだよ」
「だってこの傷は僕を守る為にしてくれたんでしょ。嬉しいもん」
「……そ、そうか」
胸の奥がくすぐったくなって、それくらいしか言えなかった。
「じゃあ服を脱いで」
和兎は言われた通りにする。
背中を撫でられると、その手のひんやりした感触に思わずびくっと反応してしまう。
「怪我はどうしたら良いの」
「脱脂綿に消毒液をやって、それから小さな傷には絆創膏を貼ったりするんだよ」
和兎は尋の前でやってみせる。
「じゃあやるね」
消毒液で傷口を拭われると、針で突かれるような鋭い痛みがはしった。
「大丈夫?」
「ああ、続けてくれ」
それから何カ所か出来た傷口の処置をしてもらう。
最初は尋に処置してもらうことで余計痛みが増すんじゃないかと心配だったが、どうにか我慢出来る範囲内で終わってくれたことに安堵した。
これも尋の刻印のお陰だ。
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