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「…………」
「あれ?」
犬は匂いを嗅ぐのか鼻をスンスンと動かす。
和兎はぽつっと呟く。
「……あの」
「生きてた。死んでるかと思って心配したよ」
「ご、ごめ……なさい……」
和兎は反射的に呟く。
「泣いてるの?」
犬は和兎の目尻に溜まった涙の雫をぺろりと舐め取った。
和兎はくすぐったさに片目をつむり、かすかに口元を緩める。
「一人?」
「…………」
「どうしたの?」
和兎はおずおずとうなずく。
「はっ、はい……一人、です」
犬はふんふんとうなずいた。
「そっか。一人で怖かったよね。さあ、背中に乗って」
和兎は言われるがまま犬の背中に怖々と手を置く。
小さな手の平にふわふわした毛皮の感触が気持ち良いかも。
「どうしたの? 早く乗って!」
口ごもった後、和兎は言う。
「の、乗れない……です」
「おっと、ごめんね。これでどう?」
犬は四つ足を折ると、身を屈めた。
「ありがとう……ございます」
「どういたしまして」
和兎は礼儀正しく頭を下げると、犬に跨がった。
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