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教室ではいつもひとり。
特に体育の授業は苦痛だ。
何かに付け、二人一組になって行動することが多いからだ。
他のクラスメートたちはさっさとペアになってしまい、結局は体育教師と一緒にやることがいつもだった。
クラスメートたちはそんな和兎をニヤニヤと意地悪そうに遠巻きにして眺める。
都会から、いわゆる田舎に転校してきた和兎は教室から完全に浮いていた。
ランドセル一つとっても他の子が男は黒系統、女子は赤系統で決まっているところに、青色のランドセルの和兎はからかわれた。
今は親に言ってランドセルを替えてもらったものの、からかわれる場所が変わるだけだった。
勉強が出来たり、美術で先生に褒められたり、それを妬んだクラスメートの誰かに足を引っかけられたり、悪口を言われたり……和兎が何も言っていないのに、女子も男子も
「こんな田舎じゃ退屈だろうからな」と言って、仲間はずれにした。
両親はそろって留守がちで、相談出来る相手もいない。
だから和兎はこうしてやってきたのだ。
神様と友達になれるかもしれないと。
もちろん神様の存在をまるっきり信じている訳ではない。
でもこの町は本当に山には子どもだけで(クラスメートの腕白な奴らまで)入ることがなかったのだ。
もしかしたら、本当に会えるかも知れない。
和兎は日曜日の午後に自転車を飛ばして山に分け入った。
山には祠があり、狼の神様はそこをねぐらにしていると図書室の郷土史の本にはあったから頂上を目指すつもりだったが、道だと思っていたのがそう見えていただけの獣道で、あっという間に迷い、今に到る。
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