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せやけど自分をエレベーターに乗せようとしたら、腕をガシッて掴まれて……。
『今からディリクレの算術級数定理の話の続きをしましょうよ』とか言ってくるから、ついうっかり」
とか言うので、
「ついうっかり!?」
と、思わず着衣を確認してしまった。
ドキドキしながら素数の方をチラ見すると、
「アホか!! そんな事せぇへんわ!! ついうっかり自分の学士論文をネタに話して、そのまま寝てもうただけや!!」
と物凄い勢いで怒られた。
学士論文? 何の話?? と思いながらも、
「すみません、ついうっかり乙女のピンチ的事象が起こったのかと……」
と言い訳すると、素数はもう一度「アホか!」と怒鳴り、
「俺は酔い潰れた初対面の女を襲う程、飢えてへん。
そんなことよりや。
これ、良く書けてるなぁって話してたんや。
修論言うても通用しそうやん」
とサイドテーブルの上に乗っている、私の学士論文と思わしきバインダーを指差して言った。
「ありがとうございます。
でも、あんまり大きな声、出さないで貰えます?
頭に響くんで」
お礼と陳情を述べると、素数は軽く「ああ」と頷いた後、
「で、ほんまにウチ来る? 本気なら、こっちも準備するけど」
とか、声の大きさはそのままに言う。
私の話、全然聞いてない。
と、それは良いとして、何の話?
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