私が研究者!?

10/11
233人が本棚に入れています
本棚に追加
/260ページ
私自身、物は最小限しか持たない主義。 故に引っ越し自体もさほど大変ではないと思う。 寧ろ、問題は退職の方。 今、私がまとめているプロジェクトは5つある。 抜けるとなると、引き継ぎが必要だけど、他のメンバーは皆、手持ちの作業でパンパン。 引き継ぐ相手が思い当たらない。 恐らく一悶着ぐらいはあるだろう。 とは言え、そんな事、構ってられない。 だって、めっちゃワクワクするんだもん。 こんなの、A大の入学式以来。 完全に退職の意思が固まった。 早速、次の日の昼休み、マイボトルのお茶を美味しそうに飲む課長(42歳 小太りギッシュの赤縁眼鏡、薄毛)に 「会社、辞めます☆」 と言ってやった。 コントみたいな勢いで、飲んでいたお茶を「ぶーっ!」と吹き出す課長に、 「来月を目処で☆」 と畳み掛けると、 「辞めるって何で!? なんか不満でもあるんか? 今まで一緒に頑張ってきたやんか! また来月、新しいプロジェクトも立つんやで!! お前が抜けたら他に誰がやんねん?」 と捲し立てて来た。まあ、想定内。 「すみません。 新規プロジェクトが成功する事を心から祈ってます。 なので、私の幸せな未来を願って、笑って送り出して下さい」 そう言って、昨日の夜、鏡の前で練習した、渾身の悩殺スマイルを向けてみた。     
/260ページ

最初のコメントを投稿しよう!