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私自身、物は最小限しか持たない主義。
故に引っ越し自体もさほど大変ではないと思う。
寧ろ、問題は退職の方。
今、私がまとめているプロジェクトは5つある。
抜けるとなると、引き継ぎが必要だけど、他のメンバーは皆、手持ちの作業でパンパン。
引き継ぐ相手が思い当たらない。
恐らく一悶着ぐらいはあるだろう。
とは言え、そんな事、構ってられない。
だって、めっちゃワクワクするんだもん。
こんなの、A大の入学式以来。
完全に退職の意思が固まった。
早速、次の日の昼休み、マイボトルのお茶を美味しそうに飲む課長(42歳 小太りギッシュの赤縁眼鏡、薄毛)に
「会社、辞めます☆」
と言ってやった。
コントみたいな勢いで、飲んでいたお茶を「ぶーっ!」と吹き出す課長に、
「来月を目処で☆」
と畳み掛けると、
「辞めるって何で!?
なんか不満でもあるんか?
今まで一緒に頑張ってきたやんか!
また来月、新しいプロジェクトも立つんやで!!
お前が抜けたら他に誰がやんねん?」
と捲し立てて来た。まあ、想定内。
「すみません。
新規プロジェクトが成功する事を心から祈ってます。
なので、私の幸せな未来を願って、笑って送り出して下さい」
そう言って、昨日の夜、鏡の前で練習した、渾身の悩殺スマイルを向けてみた。
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