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ウキウキしながら、K大院試の過去問を解いて過ごす日々が続いた。
そんなノーストレスで臨んだ試験。
ハッキリ言って楽勝だった。
無事合格し、晴れて佐藤研のメンバー(仮)に。
秘書の仕事も始める事になった。
初出勤前日の夜、佐藤研のもう1人の学生である中田さんの手前、素数の事を『佐藤先生』と呼ぶよう念押しされた。
流石にその程度の常識はある。
そう思ったが、黙って頷くと、
「俺も自分の事は水沢さんって呼ぶ」
とか言い出す。フツーだろ、それ。
そんな謎の打ち合わせをした次の日の午後、マンションから歩いて10分ちょっとのK大理学研究科の数物系建屋に向かった。
着いて直ぐ、建屋の入り口で素数に電話を掛け、
「下に着きました」
と言うと、
『ちょっと待っといて』
との事。直ぐに迎えに出て来てくれた。
建屋のドアのロックを解錠し、私を中に入れてくれた後、エントランスの奥の階段を指しながら、
「2階に昇ってすぐの部屋がうちの研究室やねん。ちょうど中田くんもおるし、紹介するわ」
とそのまま階段に向かって歩き始めたので、私も慌てて後に続く。
建物の雰囲気は母校A大とほぼ同じような感じだけど、理学部だけで建屋が10個ぐらいあるようなので、規模の違いに驚いてしまう。
流石は天下のK大である。
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