コンビニ IS DEAD

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自動ドアの鍵はかけた、一時的に棚をドアの前に移動させて塞ぎ、裏口の備えもバッチリだ。 しかし、人々はドッと押し寄せて無理矢理中に入り込もうとしていた。 「佐藤さん! 早く!」 人々の声がコンビニ内に居る私達の気持ちを焦らし、無意識のうちに私の言葉もキツくなる。 「アッ……アッ……」 オーナーの佐藤美希は、そんな状況に呑まれてかうまく言葉が出てこないようだ。 「ここは、あなたのお店でしょ!? 貴女が守らないで、誰が守るっいうの!!」 ドンドンとドアを叩く音が大きくなる、それは次第にブックコーナーのガラスの方にまで広がり始めた。 「早く!」 彼女はガタガタと肩を震わせた、しかし何かを決意したかのように俯いていた顔を上げ、自分の手を口の横に押し当てた。 「今日発売のゲーム機! サンテンドースウッチの予約は、インターネットを通じでのみになっております! ワッピーでの、店頭予約は一切受け付けておりませんので、ご了承下さーい!」 拡声器を使っているかのように響いた声は、ゾンビの如く集まっていた人達にも届いたらしく、 「マジかよ、来て損したわ」 「誰だよ、店頭予約やるって書いてたヤツ。マジ迷惑」 「帰ろうぜ」 と、不満を口にしながらコンビニの前から去っていく。 「お疲れ、オーナー」 手を下ろし、ふーっと息を吐いている彼女に声をかけた。 「まさか、ゲーム機一台にこんなに人が来るなんてねぇ。本部から連絡が来た時はこんな事になるなんて思わなかったわ」 ネットの掲示板に『ワーソンで店頭予約がある』という事実無根の書き込みがあったのが数日前。ゲーマーである私は、スウッチの人気ぶりは知っていたのである程度の混乱は分かっていたが、まさかここまでとは……。 人がゾンビのようになるには、薬も黒魔術もいらない、たったひとつのゲーム機の発売だけで簡単に完成するというのが身をもって知れた。 ※ 数日後…… 「サンテンドースウッチ、店頭予約するって。今、本部から連絡が……」 受話器を持ったオーナーの手は震えていた。 ゲームゾンビとコンビニの戦いは、始まったばかりみたいだ。
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