金魚浴衣の妹さん

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 一流の研究者を目指していた俺は、生物学で新発見でもして名を上げてやろうと思い意気揚々と上京してきた。  だがしかし、研究員としてこれを採用した大学の研究室は俺のイメージの中では最低ランクだった。  何が最低かといえば、分析機器の年代だ。都会の大学でこんな設備だとは、にわかには信じられなかった。  ブロッティングのボックスは古くさくて容器の端っこが欠けているし、ゲルは節約のためと言って既製品を買ってもらえない。  フローサイトメトリーは二色の蛍光にしか対応していない、まったくもって時代遅れの中古品。せめて五色同時に評価できるものが今の時代、常識だというのに。  クロマトグラフィーも、蛍光顕微鏡も、プレートリーダーもいずれも最新設備とは程遠い。  こんな設備では一流の研究者になれるはずがない。    俺は結局、早々に見切りをつけたのだ。もちろんたいして引き止められもしなかったが。  はぁ、これからまた職探しか……めんどくせぇ。  深いため息をつく。
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