ピタリ賞

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 今日はカップ麺と紙パック入りのお茶を銘柄も見ずにレジへ持っていく。朝から回って来た仕事の進みが芳しくなく、何でもいいから腹に詰め込んで一刻も早く仕事に戻らなければならなかった。  運よくすえひろさんのレジが空き、張りのある声で「こちらへ、どうぞ!」と案内された。俺は商品を台の上に置き、ポイントカードを出す。すえひろさんがカードと商品をスキャンし、言った。 「ポイントはお溜めしたままでいいですか?」  レジの画面に表示されている金額は二二四円。  そういえば、長い間溜めっぱなしでポイントを使っていなかった。 「全部使ってください」 「かしこまりました」  彼女は頷き、画面を操作しようとした所で大きくて真ん丸な目を見開いた。  不思議に思って俺は尋ねる。 「どうかしたんですか?」  すると、彼女は笑った。 「いえ、使えるポイントとお会計の金額が全く一緒で……ピタリ賞ですね!」  俺もつられてふき出した。  中途半端な二二四円という数字を「ピタリ賞」と喜ばしい出来事のように言われ、妙に元気を貰えた気がした。 「良い事、ありますかね?」  思わず、軽口が零れる。  すえひろさんは、いつものはにかむような笑顔で「きっとありますよ」と長いポニーテイルを揺らしながら頷いてくれた。
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