手押し相撲

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嫌にテンションが高いのが腹が立つ。 人の命をなんとも思っていない。 俺達になんの恨みがあるっていうんだ。 ふらふらした足取りで飯田さんは入った。 俺も早く入らないと、潰されてしまう。 残り十五分まで迫ってきていた。 『ねぇ、佐藤くんって鹿野さんの事好きなの?』 『は、俺がなんでや? 今はそんなん関係ないやろ。』 『へぇ~好きなんだ。』 『好きやなんて誰も言ってないわ』 『顔に出てるよ』 『出てへんわ。今それどころやない。』 俺がイライラを隠せずに下を向いた。 『このこの~青春しちゃって~。羨まし~』 『俺と鹿野はそんな…関係やない。』 その時を待っていたかのように手が伸びてきた。 俺は少しのところでかわした。 そこで、倒れそうになった飯田さんの腕を掴む。 俺の手から逃げようとするも、俺は掴んだまま離さなかった。 『不意打ち作戦やな。 そんな単純な作戦には引っ掛からへん。 飯田さん、今セコい手を使うと自分で自分の首を絞めることになりかねへんで。』 彼女は媚びるように笑った。 『…お願い。私は生きて帰りたいの。 ねぇ、ここはレディファーストでしょ。 それに、これが終わったらなんでもしてあげる』 俺は飯田さんの目をしっかりと見た。 『命に誰が優先とかあらへん。 でも、女性が完全不利なのはわかってる。 やから、俺は貴女に任せる。』 『どういうこと?』 『貴女からの攻撃は受けて俺は攻撃せえへん。』 彼女は笑った。 『馬鹿ね。私の手を離したら貴方が怪我をするかもしれないのよ。』 俺は強い口調で言った。これは一種の賭けだ。 『しかし、交換条件や。 手加減することと、この後俺達が逃げるのを助け合う。』 彼女はゆっくりとまばたきをした。 『わかった。仕方ないわね。』 そして、手の平を合わせて少しだけ押した。 俺は一歩後ろに下がったが、壁には触れなかった。 サイレン音がなりスピーカーからノイズが。 『全員終了。 最後はハッピーエンドですか。 まぁ、皆こうすればよかったものの、 人間は愚かだ。 何故、このように頭が回らないのか。 すぐに闘おうとするのか。全く理解不能だ。 それでは次のゲームに参りましょう。 その前に、疲れを癒して下さい。 一人一つ部屋を用意しました。 部屋にはシャワーと浴室付きのお風呂に、ベッドを用意しています。 今から約6時間は自由時間です。 寝るなり、フリースペースの食堂でご飯を食べるなり好きにして下さい。 それでは、see you again!!』  壁が開くと向こうには広い空間があった。  各棟で分けられているようだ。 部屋の前にはそれぞれ名前がかいてある。 疲れ切った残り五人は自室に戻った。 飯田さんが放心状態の鹿野に近づき肩を支えた。 『千恵ちゃんは私に任せて。きっちり綺麗にしてあげるから。』 『ありがとうございます。鹿野をよろしくお願いします。』 俺は腰をおってお願いした。 飯田さんはにこりと笑い鹿野の部屋に入っていった。 俺は鹿野がシャワーを浴びてフリースペースに出てくるのを待った。 髪が血糊でパリパリになっていた鹿野は綺麗さっぱりになり、出てきた。 『あ…なんて言うか。 大丈夫なんか、鹿野。』 『うん、京ちゃん。 なんか一瞬幻覚が見えてたみたい。 なんも無かったよ。 なんで京ちゃんと旅行してんのやろ。 昨日まで家におって、学校行っとったのに。 どこここ?城崎温泉とかやなさそうやんね。』 パニックになりすぎて、今朝から今までの記憶が全て消えているみたいだ。 現実逃避しているのに何もいえない。 『おお、ご飯でも食べよか』 『京ちゃん、お腹ペコペコやわ。 見てみて、京ちゃん! 千恵の好きなお好み焼きとショートケーキある。』 『そーやな。鹿野は昔からお好み焼きとショートケーキ好きやもんな。 から揚げ美味そ。いただきまーす。』 腹がいっぱいになった俺は部屋に戻った。 部屋にはシャワールームや冷蔵庫が完備されており、ここで一人でなら出ずに暮らせるな。 こんな悪夢のような一日は布団に入ればまた戻る。 お母さんの俺を呼ぶ声が聞こえる。 きっと、そうに違いないな。 夢にしては、鮮明だけども明晰夢なら納得がいく。            
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