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第1話 ロマンスグレーの君
おはようございます
これより開館いたします
ゆっくりお進みください
おはようございます
ゆっくりお進みください
おはようございます
おはようございます
自動ドアの電源を入れて玄関マットを出した後、図書館スタッフの私達は丁寧に頭を下げながら、おはようございます。と開館前から並ぶお客様に挨拶をする。
図書館は公共の施設であるため、利用者のことを「お客様」と呼ぶのには違和感があるが、それでも利用者様では長いし呼び止める時に不自然すぎるということで、だいたいの図書館では利用者のことをお客様と呼ぶことにしている。
いつも通り機械的におはようございますという言葉を繰り返していると、中折れ帽を被ったすらっとした紳士と目が合った。
「おはよう」と言いながらその男性は私に微笑んだ。
私もにこりと笑っておはようございます。と言ってみた。
男性は図書館に入る前に帽子を取り胸のあたりに持つと、いつも通りカウンター奥のレファレンスコーナーに入っていく。
今日の和倉さんはグレンチェックのグレーの帽子にコート、黒いマフラーを首から下げていた。
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