第2話 薬指のプラチナリング

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まさに図書館員の鑑と呼べる、私よりも10年以上ベテランの司書だ。 「結婚とかしてるのかしらねぇ?」 「やだ君ちゃん、ロマンスグレーの君のこと狙ってるの?」 「違うわよぉ。あんな素敵な人なら奥さんはどんな人か気になるじゃない?」 「そうねぇ……シャンソン歌手みたいな人とか?」 「奥寺っち、ちょっと妄想しすぎよ。でもシャンソン歌手って……確かにお似合いね」 君島さんと奥寺さんは目を合わせると、ぷっと吹き出した後笑った。 二人は私の先輩で、同期入社だからか仲がとても良い。 40代でお互いの子供の年が同じということもあり、休憩が一緒になるとこうやって二人でよく話しているのを見かける。 「私達みたいなおばさんじゃ相手にされないと思うけど、三村さんならいけるんじゃないの?」 君島さんに急に話を振られて、私は一瞬どきっとした。 「え? な、何言ってるんですか? 私だってもう36歳ですよ? ないですないです。」 私は大げさに胸の前で手を振ってみた。 「そうかしら? 三村さん若く見えるし、もしかしたら、もしかするかもよ?」 奥寺さんが君島さんに加勢して、私を見てにやりと笑った。 「あ、あー……でも、和倉さん、結婚してるみたいだよ?」 結城さんがちょっとばつが悪そうな顔をしながら呟いた。     
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