第2話 薬指のプラチナリング

3/6
前へ
/69ページ
次へ
「え! そうなの? 何で結城さん知ってるの?」 「いや、わからないけど左手の薬指に指輪、してたような……?」 でも僕の見間違いかもしれない。と補足すると、結城さんはスタッフルームを出て行った。 「なぁんだ、残念。あ、休憩時間そろそろ終わりだ。私行くね」 「じゃあ私も行こうかしら?」 そう言うと君島さんと奥寺さんもスタッフルームを出て行った。 一人になったスタッフルームで私は紅茶をすする。 まぁ、普通に考えれば結婚してるよね 少しだけショックを受けつつ、私は自分に当たり前の事だと言い聞かせて部屋を出た。 この日の午後はメインカウンターの受付業務だった。 私はパソコンの横のデジタルカレンダーに目をやる。 20xx.11.15.WED 19:38 閉館まであと二十分ちょっと。 だんだんとお客さんも居なくなり、図書館はますます静かになっていく。 私は、このしんとした夜の図書館が結構好きだ。 特に冬は夜が深いから、図書館の中は一層暖かく優しい雰囲気になる。 星が瞬く小高い丘の上に、ぽつんとある図書館を私は頭の中に思い浮かべてみた。 図書館から漏れる暖色系の光が、訪れた人の冷たい心と体を温めてくれる。     
/69ページ

最初のコメントを投稿しよう!

47人が本棚に入れています
本棚に追加