第2話 薬指のプラチナリング

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左手の薬指には結城さんが言っていた通り、銀色のプラチナリングが光っていた。 「では、こちらの二冊を返却処理させていただきます」 「はい。遅くなってしまい、すみませんでした。」 パソコンの画面を見ると、返却期限は今日だった。 「あの、もし返却期限日までに返却できない場合は、閉館後でも入口にある返却ポストに入れていただければ大丈夫です。明日の開館時間までに入れていただければ期限切れにはなりませんから」 私はお節介かと思いつつ、返却方法について和倉さんに教えた。 和倉さんは、少し驚いた顔で私を見た後、ほっとしたように笑った。 「そうだったのですか。てっきり今日までに返さないと怒られてしまうと思い、急いで来てしまいました」 和倉さんは、お恥ずかしい限りで。と言いながら首のあたりに軽く手を置いた。 その姿がまた可愛くて、ますます魅力的に見えた。 「大丈夫ですよ。返却、ありがとうございました」 私は少し微笑んだ後、丁寧に頭を下げた。 和倉さんも続いてお辞儀をする。 「あ、司書さん?」 「はい、何でしょうか?」 「また、明日もよろしくお願いします」 和倉さんはそう言って、にこりと笑うと図書館を出て行った。 私は再びデジタルカレンダーに目をやった。 明日は、木曜日だ。     
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