第3話 マヨネーズとパンの欠けら

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何も催し物がないからか、ランチタイムなのに比較的カフェの中は空いていた。 どの席に座ろうかと店内を見回すと、奥の席でコーヒーを飲みながら本を読む和倉さんを見つけた。 ダークグリーンのシャツの上にワインレッドのセーター、グレーのパンツというスタイルで脚を組んでコーヒーカップを持つ和倉さんは、まさに英国紳士といった雰囲気だった。 私が驚きつつもランチプレートを持ったまま和倉さんに見惚れていると、視線を感じたのか和倉さんがゆっくり私の方を見た。 そして私と同じように、あっ!という顔を一瞬した後、優しく微笑んだ。 私が軽く会釈をすると、和倉さんも丁寧に頭を下げ、また読んでいる本に視線を戻した。 私は邪魔にならなそうな、なおかつ和倉さんが少し見える離れた席に座る。 お昼はいつもここで食べてるのかな? それとも今日はたまたまかな? そんなことを考えながら、私はサーモンサンドにかぶりついた。 かなりボリュームのあるサンドで、ぼーっとしながらかぶりついたせいか野菜にかかっているドレッシングとマヨネーズがべちょっと口の周りに着いてしまった。 慌ててナプキンで口元を拭く。 ちらりと和倉さんの方を見る。 和倉さんはさっきと変わらぬ姿勢で本を読んでいた。 私は少しほっとしてクラムチャウダーを口に運んだ。     
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