第4話 ホームレスの神様①

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第4話 ホームレスの神様①

「皆さん気付いている人もいると思いますが、寒さが本格的になってきたのでまた『あの問題』が出てくるようになりました」 朝のミーティングで、館長が図書館スタッフみんなにわかりますよね?というように目配せをする。 ベテランの司書達は、あーあの問題ね。と各々頷いているが、今年から入った新人の牧野くん、折原さん、パートの木下さん、栗原さんは何のこと? と言ったように首を傾げている。 「新人の二人とパートさんは知らないと思いますが、寒くなってくると隣の公園に住んでいるホームレスの方が、図書館に寒さしのぎにやってきます。特に危害を加えてくる訳ではないのですが、他のお客様から毎年臭いがひどいとクレームを受けます。今年も、先日お客様の一人からクレームを受けてしまいました」 館長はそう言って、また今年もかぁ。とため息をついた。 うちの図書館は隣りに公園があり、そこに二、三年前から一人のホームレスが住み着いている。 図書館を荒らしたり暴れるといったことはなく、静かに本を読んでくれている良い利用者ではあるのだが、やはりホームレスということで臭いが凄い。 その人が図書館に入ってくると席を離れたり、顔をしかめて睨む人もいる。     
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