第4話 ホームレスの神様①

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ホームレスの人も自分が歓迎されていないのをわかっているようで、図書館の一番奥にあるあまり人が来ない、700番~800番代の棚の前の椅子に座っているのをこの季節になるとよく見かける。 図書館は、本の種類ごとに番号が振ってある。 小説などはだいたい900番代で利用する人が多いため、メインカウンター前や特設コーナーを作って人目のつく棚などに置かれていることが多い。 700番代は絵画の本や芸術関係の写真集、800番代は言語関係で所蔵されている本も少ないので、うちの図書館では一番奥の本棚に置いている。 何度も言うが、図書館は公共施設。 お客様といっても基本的に静かに本を読んでいる利用者をホームレスだから追い出す、ということが出来ない。 一度だけ、あまりにクレームが多い日がありホームレスの人にその事を伝えて出て行ってもらったことがあった。 こちらが丁寧に説明すると、少し悲しげな顔をしながら読んでいた本を棚にしまい、何も言わずにホームレスの人は図書館を後にした。 確かにホームレスだから臭い。 それでも善良な利用者を追い出すということに、図書館スタッフは毎年頭を悩ませているのだ。 「今年もとりあえず消臭剤を置いて何とか他のお客様にも理解していただけるよう、努力してみましょう。どうしてもクレームが多く対処しきれない場合はお帰りいただくよう促す、ということで良いでしょうか?」     
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