第4話 ホームレスの神様①

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レファレンスルームに入った後、口元を触る。 会いたいという気持ちと、もしマヨネーズとパンくずのことを覚えていたら恥ずかしいという気持ちで緊張した。 「三村ちゃん、具合悪いの?何か落ち着かない感じだけど」 一緒に午前中レファレンスルームで受付業務をする滝川さんに声をかけられる。 「え?そうですか?久しぶりのレファレンスだからかもです」 「そうだっけ?まぁ、困ったお客さんいたら俺にまわしてくれて良いからさ」 滝川さんはそう言うと、にっと笑って自分のカードをスキャンした。 私もありがとうございます。と言って自分の席のパソコンにカードをスキャンさせる。 滝川さんは今年42歳で私より年上だが、同期入社で何かと気をかけてくれる。 結城さんに負けず劣らずの本の虫で、レファレンスルームを任されることが多い。 奥さんの吉田小枝(さえ)さん(旧姓)も同期だったが、五年前に滝川さんと結婚して、今は本屋さんで働いている。 滝川さんの奥さん、小枝ちゃんとは同い年で仲が良かったから、私が恋愛のストレスで過呼吸が出てしまったことを知っている。 滝川さんもそのことを知っているからか、難癖をつけてきたり怒鳴ったりするお客さんがいると率先して対応してくれる。     
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