第4話 ホームレスの神様①

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小枝ちゃんから聞くところによると、滝川さんの一目惚れらしく、入社当初からよく口説かれていたらしい。 全然滝川さんに興味のなかった小枝ちゃんは食事に誘われる度断っていたが、だんだんと滝川さんのことが可哀想に感じてしまい気がつけば結婚という流れになっていたという。 小枝ちゃんと滝川さんは七歳違い 私と和倉さんは、十七歳違い…… 倍以上、違うんだな そんなことを考えながらパソコンの画面を見ていると、ゲートの方から異臭が漂ってきた。 顔を上げて一般書架の方を見ると、全身黒ずくめのホームレスの人が通り過ぎていくのが見えた。 饐(す)えた臭いが鼻につく。 今日はクレームがないと良いんだけど…… 少し不安な気持ちになりながら、和倉さんの方を見た。 和倉さんはいつも通りノートに何かを書き写したり熱心に本を読んでいる。 和倉さんはホームレスの人のこと、どう思うのかな 私のイメージの中の和倉さんなら何て言うだろうと想像してみたが、うまく想像出来なかった。 それに加えて、図書館を利用するホームレスに対してどんな感情を持つのが正解なのか、自分が全然わかっていないことに私は気が付いた。
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