第5話 ホームレスの神様②

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500番代は建築や育児、家政学、600番代は産業、交通などの事業関係でうちの図書館には所蔵本が少ないため、毎月一人のスタッフに任せられる。 書架整理は、振り分けられた番号の書架の本を整理したり壊れた本を修理したりと、地味ではあるが大切な業務の一つだと私は思っている。 ちゃんと番号通りに本が並んでいるかをチェックしていると、奥の方から怒鳴り声がしてきた。 恐る恐る見て見ると、利用者の一人がホームレスに向かって怒鳴っていた。 「お前、くせーんだよ! 出てけよ!!」 30代前半ぐらいだろうか。 目の血走った、ちょっと危なそうな色白の男性がホームレスを睨みつけている。 間に入って何とかしなければと思い700番代の書架に向かおうとすると、ホームレスの人はよろよろと立ち上がり、入り口の方へと歩き出した。 その姿を見て、怒鳴っていた男は勝ち誇ったように右の口角をあげて笑うと、閲覧室の方へと歩いて行った。 ……そんなふうに、言わなくても良いのに 私は何だか悲しい気持ちにった。 それでも目の前を歩くホームレスにどうやって接すれば良いのかわからず、見送ることしか出来なかった。 ホームレスの人が入り口から出ようとした時、和倉さんが話しかけているのが見えた。 ホームレスは和倉さんの方を見た後、少し笑っているように見えた。 一体何て言ったのだろうーー?     
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