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気になって目で追っていると、こちらに向かって和倉さんが歩いてきた。
「あ、司書さん。お疲れ様です」
和倉さんが丁寧にお辞儀をする。
「お疲れさまです」
私もゆっくり頭を下げた。
「元気がないようですが、具合でも悪いのですか?」
「いえ、そんなことないですよ」
「今日は寒いですからね。風邪を引かないように気を付けてくださいね」
和倉さんが優しく私に微笑んだ。
「あ、あの。さっき入り口で、何を話されていたんですか?」
「入り口で? あぁ、あの方のことですか?」
和倉さんは入り口を出て外を歩いているホームレスの方を見た。
「はい。何かお話してたように見えたのですが……」
「大したことではないです。ただ、あまりお気になさらずに。と声をかけました」
和倉さんは照れながら笑った。
「さっき男性に怒鳴られていたでしょう? 止めに入ろうと思ったのですが、間に合わなかったので。気休めにしかなりませんが、声をかけさせていただきました」
私、駄目ですね。と言って和倉さんは苦笑いした。
「あの、和倉さんはあの人のこと、どう思いますか?」
「どう、とは?」
「さっきの怒鳴っていた男の人みたいに、臭いとか、出て行ってほしいって思いますか?」
私は和倉さんが何と答えるか知りたかった。
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