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第7話 オレンジ色の誕生日②
和倉さんは私を見ると、あっという顔をした。
そしてまた両手で抱えた紙袋からオレンジを落とした。
私は車が来ないことを確認しながら和倉さんが立っている歩道へ小走りで渡り、和倉さんの足元に落ちたオレンジも拾い上げた。
「こんにちは」
私がオレンジを紙袋に戻しながら挨拶をすると、和倉さんは少し顔を赤くしてこんにちは。と小さく会釈してくれた。
「また、恥ずかしいところを見られてしまいました」
和倉さんは目を細めて笑う。
「ちょっと買いすぎてしまいまして」
照れて笑う和倉さんの持つ紙袋には、オレンジ以外にもたくさんの食材が詰め込まれていた。よく見ると、左手首には細長い紙袋を下げている。
「あの、随分重そうですけど半分持ちましょうか?」
「いえいえ、そんなの司書さんに悪いです」
そう言って和倉さんは首を横に振ったが、私は強引に赤く線のついた左手首から紙袋を持ち上げた。
その行動に和倉さんは驚いた表情を見せたが、またすぐに笑顔に戻り、それではお言葉に甘えて。と言って私が荷物を持つことを許してくれた。
「今日は、パーティーでもあるんですか?」
私は紙袋を抱えて歩く和倉さんに尋ねた。
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