第7話 オレンジ色の誕生日②

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重い石がお腹の中に落とされたような気持ちで無言で和倉さんの後をついていくと、閑静な住宅街に出た。 一本道をずっと歩いていくと大きな家やマンションばかりの高級住宅街に入った。 そのまま少し歩いて十字路を右に曲がると、和モダンな一軒家の前で和倉さんが立ち止まる。 年季の入ったヒノキの表札には和倉と書かれていた。 「すみません。ポケットから鍵を出していただけますか?」 素敵な家に見惚れていて、私は一瞬何を言われているかわからず和倉さんを見て首をかしげた。 ぼーっとした私を見て、和倉さんは同じ方向に首をかしげた後、あぁ。と言って左側を向いた。 「鍵は、コートの右ポケットです。気が利かなくてすみません」 和倉さんに促され、私はすみません。と謝りながら慌てて和倉さんのコートのポケットに手を入れた。 ポケット越しに和倉さんの暖かさが伝わってきてドキドキする。 「すみません。次いでに、鍵を開けてもらえますか?」 両手が荷物で塞がっている和倉さんは困り顔で笑っている。 私は小さく頷くと、鍵をさしてドアを開けた。 和倉さんは玄関の中に入りただいま。と言いながら床の上に荷物を降ろした。 私は和倉さんが荷物を置いたことを確認した後鍵を引き抜き、鍵と一緒に持っていた紙袋を渡した。     
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