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第8話 オレンジ色の誕生日③
お邪魔します。と言いながら私は家の中に入った。
和倉さんは、どうぞ。と言ってスリッパを出してくれた。
伊万里焼だろうか、赤い椿が活けられている花瓶が玄関前の台に置かれている。ダークブラウンの床板を踏むとギッという音がした。
「外観よりも中は古くて、驚いたでしょう?」
「いえ、そんなことありません。素敵なお家ですね」
「ありがとうございます。所々リフォームしていますが、足元、気をつけてくださいね」
抜けないとは思いますが。と和倉さんは笑って私を奥の部屋に案内した。
あまり床音をさせないようゆっくり廊下を歩く。確かに年季の入った木造の家だが、何処か懐かしい、優しい雰囲気のする家だと思った。
和倉さんが引き戸を開けると、タタタタと何かが駆け寄ってくる音がした。
「紹介します。家族の桜と、奥に寝ているのがブランです」
桜と呼ばれた犬が元気よくワフッ! と一度吠えて和倉さんの周りをぐるぐるとと回った。奥のソファの上には白い猫が眠っていた。
「あの、家族って」
「はい。犬の桜と猫のブランが私の家族です」
和倉さんは嬉しそうに跳ねる桜をなだめながら台所に向かい、食材を冷蔵庫に入れ始めた。
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