第8話 オレンジ色の誕生日③

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素早く野菜や魚を切り、お肉に香辛料をまぶして手際よくフライパンで焼く和倉さんは、プロの料理人のようだった。何を作っているのかわからなかったが、だんだんと良い匂いが漂ってくる。 あまりじろじろ見ているのも良くないと思い、隣の部屋に行こうとすると桜と呼ばれていた犬が私の元に駆け寄ってきた。 「桜ちゃん。はじめまして」 にこりと笑って頭を撫でると、ワフッ! と言って挨拶をしてくれた。 「桜は去年の今頃、職場の中にある桜の木の下に捨てられていました。桜の木の下にいたから桜、なんて安直すぎる名前ですよね。ブランも白猫だからブラン、なのですが」 私と桜のやりとりを見て、和倉さんが料理をしながら話しかけてきた。 桜の首には桜の花の形をしたペンダントが付けられていた。 「可愛い名前ですね。私の名前の由来も同じようなものです。母が病室から見える紅葉が綺麗だったから、楓という名前にしたそうです」 桜と楓、確かにちょっと安直な名前だな。 私はおかしくてふふっと笑い、もう一度桜の頭を撫でた。桜はうっとりした顔で私を見つめる。 「楓さん」 突然名前で呼ばれ、どきっとする。 「はい、何ですか?」 「司書さんは、楓さんと言うのですね。楓さん、楓さん……覚えました」 何度も名前を呼ばれ、どきどきした。 「私の名前は、もうご存知ですよね?」 「あ、はい。和倉、総史さん……ですよね?」 「はい」     
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