第9話 オレンジ色の誕生日④

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「そうですね。毎年この季節は色々な電飾が飾られていて、私も帰り道が楽しみだったりします」 キラキラと輝く中を歩いていると、すぐに駅が見えてきた。オレンジ色の電飾が街を照らしている。 「楓さんのお家は、ここから近いのですか?」 「はい、駅から歩いて四、五分の場所です」 「ご近所さんだったのですね」 「はい、そうみたいです」 和倉さんは、それではまた。と言って小さく手を振った。楽しい夢の時間が終わってしまうように感じた。 「和倉さん」 「はい」 「これ、もし良かったら」 私はバッグから読み終わった小説を取り出し和倉さんに渡した。 「お誕生日なのに、何もプレゼントできなくてすみません。この本、面白かったので良かったらもらってくれませんか?もう読まれたかもしれませんが……」 和倉さんは目を開いて驚いた顔をした後、私の本を受け取った。 「まだ、読んだことのない小説です。でも、もらってしまってよろしいのですか?」 「はい。こんなもので、申し訳ないのですが」 「いえいえ、とても嬉しいです」 和倉さんは本当に。と呟きながら本の表紙を撫でた。 「今日はごちそうさまでした。それでは、お休みなさい」 「素敵な一日をありがとうございました。お休みなさい」     
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