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「そうですね。毎年この季節は色々な電飾が飾られていて、私も帰り道が楽しみだったりします」
キラキラと輝く中を歩いていると、すぐに駅が見えてきた。オレンジ色の電飾が街を照らしている。
「楓さんのお家は、ここから近いのですか?」
「はい、駅から歩いて四、五分の場所です」
「ご近所さんだったのですね」
「はい、そうみたいです」
和倉さんは、それではまた。と言って小さく手を振った。楽しい夢の時間が終わってしまうように感じた。
「和倉さん」
「はい」
「これ、もし良かったら」
私はバッグから読み終わった小説を取り出し和倉さんに渡した。
「お誕生日なのに、何もプレゼントできなくてすみません。この本、面白かったので良かったらもらってくれませんか?もう読まれたかもしれませんが……」
和倉さんは目を開いて驚いた顔をした後、私の本を受け取った。
「まだ、読んだことのない小説です。でも、もらってしまってよろしいのですか?」
「はい。こんなもので、申し訳ないのですが」
「いえいえ、とても嬉しいです」
和倉さんは本当に。と呟きながら本の表紙を撫でた。
「今日はごちそうさまでした。それでは、お休みなさい」
「素敵な一日をありがとうございました。お休みなさい」
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