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第10話 冬の夜のケーキ
「それは、何とも微妙だね」
そう言って小枝ちゃんはお皿のへりに残っていたイカとパスタを上手にフォークで巻いて口に運んだ。
「微妙だよねぇ」
私は空になった自分のお皿を見つめてため息をつく。
「指輪はしてるのに家族は犬と猫だけって、どうゆうことなんだろうね? 死別か別居中か? それか……」
お済みのお皿をお下げいたします。と言ってウェイターが私と小枝ちゃんのお皿を下げた。小枝ちゃんのお皿はつるりとしていて、綺麗にパスタがなくなっていた。
「それか、何?」
「それか、フェイクとか?」
「フェイク?」
少し大げさに顔をしかめていると、食後のケーキと紅茶が運ばれて来る。小枝ちゃんは目を輝かせながら、美味しそう。と言ってケーキをじっと見つめている。
和倉さんと二人だけの、正確には二人と犬と猫だけの誕生日会をした翌週の水曜日、私は小枝ちゃんをごはんに誘った。
ちょうど私も小枝ちゃんもお休みで、この日は久しぶりに会うことが出来たのだ。
「そうそう。和倉さんってモテそうじゃない? だから女避けのフェイクで指輪をしてる、とか?」
「まさか」
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