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とは言ったものの、確かに大学教授であれだけお洒落で格好良かったら、学内でも人目を惹くだろうと私は考え直した。
「じゃあ独身ってこと?」
「そこまでは、わからないけどさぁ」
小枝ちゃんは少し首を傾げながらチーズケーキを小さくフォークで切って口に入れた。うー、と唸りながら幸せそうに口を緩める。
「まぁ、もう少し仲良くなったら聞いてみたら良いんじゃないの? 楓さん」
小枝ちゃんが上目遣いで私を見る。
「小枝ちゃん、面白がってる? 一応これでも真剣に悩んでるんだけど」
「いえいえ、面白がってないよ。カエちゃんが恋してる顔見るの久しぶりでちょっと嬉しいだけ」
「嬉しい?」
「そう。だってカエちゃん、もう随分恋愛してないでしょ? まだ三十代なのにもったいないよ」
まだ三十代か。
もう三十代で、恋をするには遅すぎる気がしていたが、小枝ちゃんの中ではまだ三十代なのだと思い、少し不思議な気持ちになる。
「でも普通はもう結婚とかしてたりしない? 同じ三十代でも、私の場合後半だし」
「普通って何よ。今の時代、普通なんてあるようでないようなもんじゃない? そうゆうの、カエちゃんは気にしすぎなんだよ」
もっと肩の力抜きなよー。と言って小枝ちゃんは最後の一欠片をフォークで刺した。また小枝ちゃんのお皿がつるりと綺麗になる。
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