第10話 冬の夜のケーキ

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「そうかな」 「そうそう。諦めたらそこで終わりって誰かも言ってたし」 美味しかったー。と言いながら小枝ちゃんは紅茶に砂糖とミルクを入れてスプーンでかき混ぜた。甘いも好きなのにスレンダーな体型を維持しているのはいつ見てもすごいと思う。 小枝ちゃんは、数年前から不妊治療をしている。あまり詳しくは聞いていないが、中々子供が出来ないと以前聞いたことがあった。明るい性格だから暗い話はして来ないが、きっと私の想像も出来ないほど辛かったり悲しかったりすることもあるのだと思う。 諦めたらそこで終わりというのは、小枝ちゃん自身に言い聞かせている言葉でもあるなのかなと私は思った。 「そうだよね。和倉さんとまた話せる機会があったら、頑張って聞いてみる」 「そうそう、その意気だよ! なんか良いなぁ。私もときめきたいよー」 「小枝ちゃんには滝川さんがいるじゃない?」 「タキさんはまぁ、好きだけど。もうときめきとかは遥か昔のことっていうかさぁ」 ちょっと違うんだよね。と言いながら小枝ちゃんは諦め顔で口を尖らせた。その顔が少し滝川さんと似ていてつい笑ってしまう。 「でも滝川さん、優しいじゃない。気が効くし本の知識もすごいし」     
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