1.栄坂-琥太郎

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なんだか聞きそびれちゃったけど、さっき言ってた「それもあるけど」ってどういう意味だろう。学力以外で僕が白星に行けない理由なんてなかったはずなのに。 翠玉館は僕たちが3年間お世話になる下宿先だ。地方都市から状況してくる生徒も多い栄坂市では高校生のための下宿がいくつもあって、ほとんどの場合は学校と提携していない。 同じ下宿に泊まっていても通っている学校はみんなバラバラ、なんてことがほとんどだ。 翠玉館までは駅からバスに乗って10分ほどのところにある。ちなみに翠玉館から白星高校までもさらにバスで10分ぐらいだ。 バス停に着くと、ちょうどバスが来たところだった。 重いキャリーケースに苦戦しながら乗り込む。運転手さんが手伝いを申し出てくれたけど断った。 仮にも女の子の前でそんな姿は見せられない。確かに背は低めだし童顔だし男としては頼りなく見えるかもしれないけど、僕だって男だ。それなりにプライドがある。キャリーケースの1つや2つぐらい自力で運べる。     
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