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それから首筋に、鋭い口吻を突き刺しやがる。
ちゅうちゅうと、音をたてて汁を吸うんだ。気色がわるい。
汁を吸われて、うれしいヤツなんているものか! そんなことに関係なく、『スイスイ』は、満腹するまで離れやしない。
「スイスイ一丁」
とかなんとか言いながら。
あの言いぐさは、ムチャクチャ腹がたつし。腹がたつだけじゃあなくて、5~6匹に刺されたら死んでしまうんだ。ふつうのヤツならな。ヒラヒラした、穴のあいた皮だけになっちまう。
ホントだぜ。
だから、『スケキヨ印・スイスイコロリ噴霧器』は必需品だ。
うまく噴霧すれば、『スイスイ』は撃墜できるんだ。
そうして、道路の上にコロリと転がるんだ。
「一丁あがり」
とかなんとか言いながら。
まったくもって、ふざけてやがるよな。
まあ、ここまででコンビニまで、道のり半分ってところか。
そうなると次の問題は当然、アスファルトの下から、ぞろぞろ出てくる『うぞうむぞう』だろうな。うん。
全身まっくろでーーまあ、タイツスーツを着た人間に見えなくもない。でも、顔のところには目も鼻も口も、なんにもない。
のっぺらぼうって、やつ?
そいつらが、どこから声を出してるのかさっぱり分からないんだが、
「栄光あれ」「栄光あれ」「栄光あれ」
と叫びながら、次々とびかかってくるわけだ。
何が、
「栄光あれ」
だ。
力はそれほどでもないんだけれど、とにかく数が多い。50匹くらい出てくることだってある。人によっては千匹以上、一度に相手をしたこともあったらしい。
相手をしなければどうなるかというと、当然、下敷きになってオダブツだ。
窒息死する前に、体のなかの色々なモノが、
じゅるり
と、はみ出すよな。ええと、色とりどりのモノがさ。
下敷きになるのを回避するため。とびかかってくるのを、しばきたおしながら前に前に進むのは、かなりの難行だ。
それに『うぞうむぞう』は、殴ったり蹴ったりすると、くるくる大げさに回転してから地面に倒れて爆発するんだ。
なかには何回もバク転をするのも、いたりする。空中きりもみ回転するのも、いたりする。
「栄光あれ~~~~っ!」
とかハデに叫びながら。
あまり一度に爆発すると、こっちもヤバい。
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