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このあいだも、コンビニに行こうとした誰かなんだろう。昼間の坂の途中に、コナゴナになったヤツが転がっていたしな。
まったく剣呑だ。
まあ、そんなこんなで『うぞうむぞう』出現地帯を突破しても、だ。
やっと見えてきたコンビニの看板。希望の光。
その広い広い駐車場には、たいてい『しっぽなし』が、異様なシルエットを誇示して立ちはだかってるのがフツ―だ。
こいつは、たとえじゃあなくて、ほんとうにデカい。バカでかい!
恐竜くらい、あるんじゃあないかな? 俺は本物の恐竜を見たことはもちろん、ないんだが。
『しっぽなし』は、
「ふもう」
と、叫びながら近づくヤツを、かたっぱしから踏み潰しやがる。それはもう、まんべんなく。執拗に。微に入り細をうがって。
ええと。この表現は、この場合、適当なのかな? まあ、いいや。
駐車場には煎餅みたいになった車の残骸。犬猫、巨大ゴキブリ、人間のなれのはてが踏まれたガムそっくりに、こびりつき。それはもう阿鼻叫喚。
まったくもって不快で不毛なんだ。
で、こいつにはスケキヨ印の特売品も通用しない。
もちろん、ケリを入れても不毛なだけだ。グーで殴ったって同じことだ。全身、大きなウロコに包まれていて、鉄板を殴るようなものだから。殴った拳が、ぐちゃぐちゃになるのがオチさ。
どこまでも不毛で不毛で、どうしようもない。
それなら、どうするか?
潰されないよう、うまく避けながらーー後ろにまわり。尻尾があったはずの尻の切り口に『カラシ』を塗りたくるしかない。
カラシ? もちろん、おでんに欠かせない、あのカラシに決まっている。
チューブ入りでも、まあイイんだけれど。ここは本格練りカラシといきたいところだね。
そいつを、『天狗商店謹製・ハナタカ自在伸縮棒』で塗りたくる。
なんなら『猫また卸問屋の万能熊手』でもかまわない。
あるいは『黄金鉄仮面通販おススメ。段階式刷毛』でも、だ。
うまく塗れれば、『しっぽなし』はたちまち硬直し、あちこちから火花を吹き出して大爆発するんだ。
そりゃあもう、ものすごい大爆発だ。
虹色のかたまりは、
パッカ~~~~ン
と飛び散るし、七色の散弾がまき散らされるし。
あたりいちめん、不毛地帯になるくらいの。
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