1人が本棚に入れています
本棚に追加
姿勢を正して見送る初老の男。一緒に残された少年は心底居心地が悪い。
(…………)
はやく終わらないかと天に祈りはじめた頃、スタッフルームの戸が力なく開いた。
「――なんという喪失感……ああ、重い心が重い。万物全てが遠い異国の星を想って泣いているではないか。果てなき永久への旅路……うぅ」
膝をつき、両の手で顔を覆うと、中年の男は少女のようにむせび泣く。
「ワシは、ワシはっ」
「だ、旦那さま……旦那さま!」
見かねた初老の男が抱きかかえるも、やるせなさを嘆く懺悔は止まらない。
「ああ、執事か。帰ろう我が家へ、温かみのあるところへ。寒い……凍えるように寒い」
「し、失礼します。さ、旦那さま、わたくしめにおつかまりください」
中年男と初老の男は、もつれ合うようにして出口へ向かった。
最初のコメントを投稿しよう!