2/3
前へ
/9ページ
次へ
姿勢を正して見送る初老の男。一緒に残された少年は心底居心地が悪い。 (…………)  はやく終わらないかと天に祈りはじめた頃、スタッフルームの戸が力なく開いた。 「――なんという喪失感……ああ、重い心が重い。万物全てが遠い異国の星を想って泣いているではないか。果てなき永久への旅路……うぅ」  膝をつき、両の手で顔を覆うと、中年の男は少女のようにむせび泣く。 「ワシは、ワシはっ」 「だ、旦那さま……旦那さま!」  見かねた初老の男が抱きかかえるも、やるせなさを嘆く懺悔は止まらない。 「ああ、執事か。帰ろう我が家へ、温かみのあるところへ。寒い……凍えるように寒い」 「し、失礼します。さ、旦那さま、わたくしめにおつかまりください」  中年男と初老の男は、もつれ合うようにして出口へ向かった。
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加