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あれは29歳の夏だった。
私は、生まれて初めて「婚活パーティー」というものに参加した。
もうすぐ三十路。
元彼と別れて、早5年が過ぎようとしていたその矢先。
いつまでも過去に引きずられていては、良縁なんて来ない。
まずは、気軽に出逢いの場所を訪れることから始めよう。
というわけで、花柳可憐。
20代最後の歳に、思い切って参加してみた。
「ハイクラス! 医師・公務員・大手企業・会社経営などの男性中心。女性無料ご招待」
よし!
2年前に結婚した友達は、結婚する前にそういう場所に一度でいいから行ってみたかった!とか言っていた。
私からすれば、適齢期に自然な流れでゴールインできたあなたの方が羨ましいのだけど。
でも、ものは考えよう。
私はフリーだからこそ、気兼ねなく参加できるのだ。
(さて、どんなメンズに出逢えるかしら?)
この際だから、目一杯社会勉強させていただこう!
(できれば公務員か弁護士か学校の先生……それから……)
少しくらい高望みしたって、バチは当たらんだろう。
しかも、
「参加費 男性:7000円 女性:1000円」
参加費は女性の方がはるかに安い。イベントによっては、女性無料のところもある。
私は初参加ということで、無料のイベントに参加することに。
*
そして、待ちに待った当日。
期待に胸膨らませて会場へ趣いた私。
「初めまして」
え?
「こんにちは。加藤です」
「あ、は、花柳といいます……」
まず、プロフィールカードの交換から。
「名前:加藤 茂
年齢:37歳
最終学歴:高卒
職業:電気関係の仕事」
第一印象は……
ゴリラ。
「……」
「へぇ~、作家になりたいんだー」
沈黙を先に破ったのは、ゴ……彼だ。
「あ、はい。行く行くは」
「尊敬してる作家はいるの?」
「そうですね、エッセイストでもある――」
「俺本読まないからよくわからん」
っ!?
(最後まで聞けよ……)
「どんな話書くの?」
さっきの回答はもういいのか?
「このイベント何回目?」
話ぶっ飛びすぎじゃない?
(1分間、長いな……)
「あとさー、休みの日何してんの?」
もう既に疲れた。そして、そうこうしているうちにトークタイム終了のアナウンス。
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