第1章 女性無料

2/3
1人が本棚に入れています
本棚に追加
/6ページ
あれは29歳の夏だった。 私は、生まれて初めて「婚活パーティー」というものに参加した。 もうすぐ三十路。 元彼と別れて、早5年が過ぎようとしていたその矢先。 いつまでも過去に引きずられていては、良縁なんて来ない。 まずは、気軽に出逢いの場所を訪れることから始めよう。 というわけで、花柳可憐。 20代最後の歳に、思い切って参加してみた。 「ハイクラス! 医師・公務員・大手企業・会社経営などの男性中心。女性無料ご招待」 よし! 2年前に結婚した友達は、結婚する前にそういう場所に一度でいいから行ってみたかった!とか言っていた。 私からすれば、適齢期に自然な流れでゴールインできたあなたの方が羨ましいのだけど。 でも、ものは考えよう。 私はフリーだからこそ、気兼ねなく参加できるのだ。 (さて、どんなメンズに出逢えるかしら?) この際だから、目一杯社会勉強させていただこう! (できれば公務員か弁護士か学校の先生……それから……) 少しくらい高望みしたって、バチは当たらんだろう。 しかも、 「参加費 男性:7000円 女性:1000円」 参加費は女性の方がはるかに安い。イベントによっては、女性無料のところもある。 私は初参加ということで、無料のイベントに参加することに。   * そして、待ちに待った当日。 期待に胸膨らませて会場へ趣いた私。 「初めまして」 え? 「こんにちは。加藤です」 「あ、は、花柳といいます……」 まず、プロフィールカードの交換から。 「名前:加藤 茂  年齢:37歳  最終学歴:高卒  職業:電気関係の仕事」 第一印象は…… ゴリラ。 「……」 「へぇ~、作家になりたいんだー」  沈黙を先に破ったのは、ゴ……彼だ。 「あ、はい。行く行くは」 「尊敬してる作家はいるの?」 「そうですね、エッセイストでもある――」 「俺本読まないからよくわからん」 っ!? (最後まで聞けよ……) 「どんな話書くの?」  さっきの回答はもういいのか? 「このイベント何回目?」  話ぶっ飛びすぎじゃない? (1分間、長いな……) 「あとさー、休みの日何してんの?」  もう既に疲れた。そして、そうこうしているうちにトークタイム終了のアナウンス。
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!