プロローグ

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プロローグ

お前には謝らねばならぬ…か。 一度きりのお前の人生を私に捧げさせてしまった。 同じ時を生きるため、殺させた。 血の繋がりがある以上、共にはなれぬのだ。 死して後、共になるほかあるまい? お前を影武者にした理由を話そう。 影武者となれば誰よりも傍にいる。 だが、根はもっと深いところにある。 戦で私が死ぬようなことあらばお前はどうなる? 上杉の為、と嫁に出されるであろう。 それが許せぬのだ。 お前を幸せに出来ぬと知りながらも、誰かに譲るなどできぬ。 お前が他の男と生きるなど許せぬ。 私が戦で死ぬようなことあらば、その場でお前も殺すつもりであった。 共に死人となった今、お前のことは世から一切忘れ去られるであろう。 お前はもはや私の妹ではない。 お前の名を上杉から消したのは他でもない私なのだから。 この景虎に妹が存在したなど誰も知らぬこととなる。 私に誰よりも愛した女性がいたこともな。 死して尚お前を隠したいらしいな、私は。 だが、景勝にだけ門外不出の書を残した。 景勝は私の遺言を守り子孫へと受け継いでいくであろう。 一、彼(か)の亡骸は私と共に葬る事。 一、彼の存在は隠し通さねばならぬ。何人たりと私の墓を暴かざる事。 一、私の即佛を他の場所へと移すことあらば、必ずや彼の亡骸も共に移せ。土に帰ることあらば周りの土も移す事。 神へと望むこととしよう。 来世でもお前と出逢うことを。 兄妹ではなく、誰にも隠し立てせず愛し合える関係となることを。 何度生まれ変わってもお前を愛する。 私が心から愛するのは、今までも、これからも、お前だけだ。 お前こそが私を満たしてくれるのだから…。 だがな。 本来ならお前の人生はお前のものだ。 私はお前を離すことなど出来なかったが、お前の幸せを何よりも守りたい。 お前の笑顔を…。 生まれ変わることあらば、次こそ幸せになれ。 一、 誰よりも幸せになれ。 一、 お前は苦しむことになるだろう、だが選べるのは一人。人を壊すなどと思うな。自身で選べ。 一、 お前を何よりも大切に思う。だからこそ次はもう間違わぬように。 転生したとて、また出会うだろう。 お互い、自身で思うより惹かれあうこととなる。 お前も否定だけはしないで欲しい。 私を愛したこと。 愛していること。 次に会う時も、必ず愛してると言わせる。 いつの運命もお前と共に。 愛している。
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