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「だから適任なんだ。そういう感情抜きでやってほしい仕事だからね。もちろん身体の関係なんて必要ない。今言った条件を守る以外は、キミは普段通り過ごしてくれればいい。そして、キミがこの仕事を辞めたくなったら、一言申し出てくれればすぐに契約を解除する」
……なるほど。
つまり、コイツ好みの観賞用ペットになる……ってことか。ざっくり要約すれば。
でも……まあ、いいんじゃないか。
俺は、想像したこともない未知の経験がしたかったんだから。それこそ自分の望み通りだろう。
条件は悪くない。……むしろ、この上なく興味深い仕事が転がり込んだと言ってもいい。
「ーーじゃ、俺からも質問させてください」
「何でもどうぞ」
「あなたはどうして、こんな奇妙な相手探しをしてるんですか?奥さんとかそういう人、いるんですよね?」
「婚約者は一応いるよ。親が決めた、ね。でも、彼女を愛してるとかそういうのじゃない」
神岡は、表情ひとつ変えないままそんな言い方をする。
「……僕も、キミと一緒だ。親が決めた通りの道を歩いて、このまま結婚して会社を継いでーーそれが面白いのか?と……ある日、思ってしまった」
初めて見る静かな眼差しで、彼はそう呟いた。
「自分が好きなことやしたいことなんて、結局一度もやったことがなかったんだなぁ、って気づいたらーー急にいたずら小僧みたいな気分がムズムズしてきてね。
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