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「あのー、ぶっちゃけた話、これって『愛人契約』じゃないですよね?なんかヘンな違和感ありすぎるんですけど?……『ペット契約』とかのほうがしっくり来るんじゃないですか?」
「そうかな?だってキミはペットじゃない。僕にとって重要な契約相手だ。
ーー君のことは、大事にする」
そう微笑んで俺を見る彼の瞳が、一瞬誠実な色を湛えたように見えたのはーー気のせいだな、多分。
「じゃ、契約成立だ。契約書は改めてちゃんと渡すよ。部屋の住所などはまた知らせるから、連絡先を交換しよう。
これからよろしくね、三崎君」
「よろしくお願いします……」
ーー勢いに任せて引き受けてしまったが。
考えれば考えるほど尋常でないこの話に、簡単に応じて大丈夫か俺?
まとまらない思考をぐるぐるさせながら、俺はこの奇妙極まりない契約を無事済ませたのだった。
「じゃ、戻ろう。時間を取らせて悪かったね。沢木店長にも謝らなきゃな」
美しいベンツが走り出す。
丁寧な運転が心地いい。ホワイトムスクが静かに香る。
こうやって黙って運転する彼の横顔は、この上なくハイクラスなオーラを放っているのにーー。
「じゃ、これから君のことは柊くんって呼んでもいいかな?柊くんか……かわいいなぁ」
とか勝手に呟くヘンジンっぷりとあまりにギャップがありすぎてーーちょっと笑える。
「……なら、俺はこれからあなたをいっくんと呼びます」
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