新居

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「……すごい」  秋も深まりつつある、土曜の午後。  俺は、神岡と都内のとあるマンションの一室にいた。  部屋は10階。間取りは3LDK。大きな窓から、都内の景色を広く視野に納められる。インテリアや家具、照明、食器など、センスのいい品物も既に完璧に配置してある。 「どうかな?あんまり高級感ありすぎでも不自然かと思ったので、部屋としては中の上くらいにしてみたけどね」 仕事の合間に時間を作ったらしい。神岡はスーツ姿にビジネスモードの歯切れ良さでこの新居を俺に案内する。 「いや……俺には立派すぎて。……ちょっと釣り合わないんじゃ……」 「いやいや。キミそのもののイメージも一新してもらうんだから、最低このくらいはね」 「……なるほど」  そうだった。それは俺の仕事のひとつだった。「この部屋で彼好みの男子として過ごす」という任務はしっかり全うしなければならない。  そう思いながらいつもの癖でついメガネのブリッジを上げようとして、はっと気づく。  数日前にコンタクトを購入し、愛用のダサいメガネは泣く泣く封印したのだった。……こんな顔のどこがかわいいんだ全く。     
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