新居

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「それから、必要な分の服などは揃えたつもりだよ。足らなければいつでも言ってくれればいい」 「……うーむ」  クローゼットを開けるとずらっと並ぶ、その上質さが一目で分かる衣類。どの服にも、控えめだが魅力的なセンスの良さが溢れている。エキセントリックな趣味だったらどうしよう……と内心不安だったが。 「サイズなどは、聞いておいた通りのものを選んだから大丈夫だとは思うが……どれか試着してみてくれる?」 「えーと……じゃ、とりあえず」  Vネックの淡いグレーのセーターと黒の細身のパンツを選び、別室で着替えてみた。  ぴったりだ。今までは無縁だったハイセンスな空気にちょっと照れる。 「……どうでしょう?」 「ん!やっぱり似合うね。数段レベルアップするから自分でも驚くだろ?」  神岡は、着替えた俺を見るとぱっと輝くように微笑み、楽しそうに言った。 「……まあ……そうですね」  ぶっちゃけた話、服装やお洒落に興味はない。でも、こんな風に自分ががらっと変身するなんて、これはこれで結構興味深い。 「……でも、こんなにいろいろ……どれだけ大金使ってます?」 「どうせ忙しいだけ忙しくてろくに使う場所もないんだ。カネは貯めとくだけのモンじゃないだろ?じゃ、これは部屋の鍵」     
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