新居

5/8
前へ
/355ページ
次へ
 若いながらもてきぱきと明るい対応の青年が出て来た。華奢で長身の、どこか中性的な美形だ。 「ボクは宮田といいます。これから毎回三崎様を担当させていただきますので、どうぞよろしく。 ーーなるほど」 「……はい?」 「いや、神岡様に聞いていた通り。かわいい方ですね。ボクも担当しがいがありますよ」 「……はあ……どうも……」  今まで縁のなかったそんな言葉を急に聞くようになり、なんだかむずむずする。何とも答えようがない。 「じゃ、神岡様指定のカットとスタイリングでいっちゃいますのでねー。最初にシャンプーさせていただきますねー」 「……お願いします……」  されるがままになるのも俺の仕事なのである。……やっぱペットだよなぁ、この感じ。  宮田は慣れた手つきで仕事を進めながら、気さくに話しかける。 「三崎様は、神岡様のお気に入りの後輩さんなんですね」 「は?あ……ど、どうなんですかね」  この前神岡と口裏合わせをした「リストラされて神岡を頼ってきた大学時代の後輩」を必死に思い出しながら、曖昧に答える。 「ボク、神岡様のスタイリングも担当してるんですが……いつも隙がなくてクールな彼が、こんなふうに後輩かわいがるなんて。ちょっと意外でしたよ」 「……へえ……意外ですか……」     
/355ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1772人が本棚に入れています
本棚に追加