新生活

2/8
1761人が本棚に入れています
本棚に追加
/355ページ
 新居へ引っ越して、一週間が経った。  居心地ははっきりいって最高にいい。変にでかすぎたり、豪華できらびやかでないところが心和む。神岡のセンスの良さがその辺にも感じられる。  とりあえず、こんなふうに「大事に」されているからには、彼との契約は完璧にこなそうと意気込んでいる訳だが……  神岡も相当に忙しい人間のようだ。大企業の副社長なのだから、当然といえば当然だ。  彼からはまだ特に何の連絡もなく、目下この快適な新居で自由気ままに過ごしている。  このままなんにもしなくても、経済的には何の不安もない。  だからといって、完全に神岡のペットと化す気もない。そんなんじゃ、ほんとに囲われたみたいで気持ち悪い。  そんなわけで、GSのバイトは継続することにしたのだ。  冬の初めの金曜の朝。吐く息が少し白くなる。 「おはようございまーす」 「おはよー三崎君。神岡さんのアシスタントは順調かな?」  店に入ってマフラーを取る俺に、いつもの明るさで沢木店長が声をかけてくれる。  神岡との契約について、店長には「神岡の仕事のアシスタント」と話した。あんな怪しい契約内容を正直に話せる訳がない。 「まあ……いまのところ、暇ですけどね」     
/355ページ

最初のコメントを投稿しよう!