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新居へ引っ越して、一週間が経った。
居心地ははっきりいって最高にいい。変にでかすぎたり、豪華できらびやかでないところが心和む。神岡のセンスの良さがその辺にも感じられる。
とりあえず、こんなふうに「大事に」されているからには、彼との契約は完璧にこなそうと意気込んでいる訳だが……
神岡も相当に忙しい人間のようだ。大企業の副社長なのだから、当然といえば当然だ。
彼からはまだ特に何の連絡もなく、目下この快適な新居で自由気ままに過ごしている。
このままなんにもしなくても、経済的には何の不安もない。
だからといって、完全に神岡のペットと化す気もない。そんなんじゃ、ほんとに囲われたみたいで気持ち悪い。
そんなわけで、GSのバイトは継続することにしたのだ。
冬の初めの金曜の朝。吐く息が少し白くなる。
「おはようございまーす」
「おはよー三崎君。神岡さんのアシスタントは順調かな?」
店に入ってマフラーを取る俺に、いつもの明るさで沢木店長が声をかけてくれる。
神岡との契約について、店長には「神岡の仕事のアシスタント」と話した。あんな怪しい契約内容を正直に話せる訳がない。
「まあ……いまのところ、暇ですけどね」
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