序章 妹のようなモノと僕は語らってみた

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「いい加減学校に行ったら?」  僕は朝食が運ばれてくるのを待ちながらガンプラ作りにいそしんでいる少女にそう声をかける。彼女はニッパーでラナーからパーツを外すとカッターナイフと紙やすりでそれを綺麗に製錬していく。 「危険を冒してまで学校で何か学ぶ事があるのかい?」  彼女は妹という事らしい。  らしいというのは、彼女は僕の血のつながった妹ではない。少し細めの癖っ毛、その色は黄金、そして瞳の色は僕とは違う。母が亡くなってから出ていくようにいなくなった父が毎月の生活費と一緒に送り付けてきた自称妹。トーストとハムエッグと牛乳を目の前に配膳すると、ガンプラを片付けて朝食を見る。 「流(ながれ)、今日の朝食もいい出来だ」  命を取られる程危険な事は学校にはない。  だが、彼女はこの国の、日本の学校には馴染めなかった。いじめにあっていたかは分からない。彼女はいつからか学校に行くのを止めた。  そもそも日本の中学校に通う必要のないくらい頭はいいらしい。僕の事を呼び捨てにするのもまぁ別にいいかなと思っている。それより僕は今欲しい物があるのでバイトをしようか迷っている所だ。  無料の求人広告をテーブルに置いたまま戸締りを終える。 「それ食べたら流しに置いといて」 「ん、もう行くのかい?」 「うん、じゃあ行ってきます。心、何処か行くなら戸締りしっかりしてね」 「あぁ、行ってらっしゃい」  僕が学校に行っている間の心の行動は不明だ。そもそも心という名前も彼女が言っていただけで、父親からの手紙には名前一つ書いていなかった。  娘を預けるとだけだった。心は正直ありえないくらい可愛い。美少女と言っても過言ではないだろう。もしこれで大人しく僕に懐いてくれたらシスコンにでもなったかもしれない。  だが、彼女は恐ろしいくらいにスカした少女だった。質問を質問や疑問で返す事が殆ど、僕と彼女は交わる事も繋がる事もない。ただ兄と妹らしい男女が同じ空間内で生活をしている。  ただそれだけの関係なのだ。それで、僕は構わないと思っている。  いや、思っていた。  心と僕が関わっていくのはすぐに訪れた。
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