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こうしてDQNが取り締まられて社会からいなくなれば、彼らのためにさかれていた労力の無駄がなくなり、世界標準から見てガラパゴス化している過度な日本のサービスも改善されることであろう。
そうなれば、仕事をするにしても以前より気楽にできるようになり、バイト離れで苦しんでいる飲食業の人手不足問題も解消するかもしれない。
いや、それどころか、コミュ障や心の病でなかなか職につけずにいるニートやヒッキーの人々の社会に出る手助けとなる可能性も……。
これは、新しい時代の幕開けを感じる……行き詰まりを見せていたこの現代資本主義経済に一筋の光明が射したのだ。この国の未来はきっと明るいに違いな――。
「――おい、なにぼうっとした上にニヤニヤしてんだよ?」
不意に、そんな妙に苛立ちを覚える男の声がすぐ目の前で聞こえる。
「……あ! は、はい! すみません! えっと……ああ! いつものマイルドエイトでしたね! 少々お待ちを……」
その声に妄想から現実へと引き戻された僕は、しどろもどろに謝りながら、慌てて客の求めるタバコを棚から取り出して渡した。
「ったく気持ち悪ぃ野郎だな……文句つけたようと思ってたけど、気持ち悪いからもういいや。そんなんじゃ、どこ行っても使えないよ?」
DQNクレーマーとして有名なその男性客は、代金ちょうどのお金をテーブルの上に放り投げると、僕を見下すように眺めながら鼻で笑って自動ドアを出て行く。
しかも、「むしろ、おまえがな」という、どの口で言ってるのやらとツッコミたくなるような台詞まで最後に添えて。
「ありがとうございましたーっ!」
内心ひどくムカついたが店員としてケンカするわけにもいかず、僕は怒りを抑えながらDQN客に頭を下げる。
ま、現実なんてそんなもんだ……なんともままならぬ、この不条理な人間社会……。
(DQNなお客様は神様…ですか? 了)
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